チーズの栄養成分

ヨーロッパでは「白い肉」と呼ばれるほど、良質な動物性たんぱく質を豊富に含んだチーズ。
またカルシウム、A、B2をはじめとするビタミン、ミネラルを豊富に含み、
栄養価が非常に高いことで知られています。
さらに、チーズには、丈夫な歯や骨を作るだけでなく、健康的な肌や髪を保つ作用、
整腸作用、ダイエット効果、そして制ガン作用などさまざまな働きがあります。

 

一般的には脂肪分が多く太ると思われがちなチーズですが、
一日の必要摂取量を普段の食生活に取り入れるだけで、
手軽に健康な体を保つことができます。

 

 

チーズの成分

牛乳や山羊乳などに乳酸菌やレンネットと呼ばれる酵素を加えて凝固させると、
乳清(ホエー)と呼ばれる液体部分と凝乳(カード)と呼ばれるチーズになる固形部分に分かれます。
このときに、乳がもっている栄養分が凝乳のほうに移行して濃縮します。

 

このためチーズには、乳に含まれるたんぱく質の約75%、
脂肪の約90%、カルシウムの約70%が含まれます。
チーズの種類によって成分の分量は異なりますが、
たとえば、ゴーダやチエダー100gには、同量の牛肉の約1.5倍に相当するたんぱく質があり、
カルシウムは煮干約50gにも相当する量が含まれています。
同時にたんぱく質と結合したビタミンB群、脂肪に溶けたビタミンAも凝乳に移行します。
チーズには、牛乳に含まれる主要栄養素が失われることなく
そのまま詰め込まれている栄養分の高い食品といえます。

 

 

チーズの栄養素

牛乳には人間の母乳と同じくほぽ完全な栄養分が含まれていて、
その栄養分が含まれたチーズは、良質なたんぱく質、カルシウム、鉄分、
ビタミンA、B群など、私たちの体に必要な栄養分がバランスよく含まれた完全食品です。

 

また、牛乳を飲むとおなかがゆるくなるので苦手という人がいますが、
これは、乳に含まれる乳糖という成分を消化吸収するはたらきが
弱いために起こる症状(乳糖不耐症)です。
しかし、チーズはこの乳糖が製造過程で液体成分の乳清(ホエー)に移行するため、
牛乳が苦手な人でも、チーズなら安心して乳の栄養分をとることができます。

 

カルシウム

カルシウムだけは日本人に一番不足しがちな栄養素といわれています。
日本人が一日に摂取しなければいけないカルシウムの量は、成人で600mgで、
成長期の小中学生や妊婦、中高年女性は800mg以上必要といわれていますが、
1人当たりの平均摂取量は600mgに到達していないというのが現状です。

 

.カルシウムが減少する骨が折れやすくなるだけでなく、
とくに女性は女性ホルモンの分泌が減少し、骨そしょう症になりやすくなってしまいます。

 

チーズにはプロセスチーズ100g当たりに630mg、チェダー100g当たりに740mg、
パルメザン(粉末)100g当たりには1300mgものカルシウムが含まれています。
また、チーズに含まれるたんぱく質が吸収を促進してくれるので、
手軽にカルシウムを取り入れるためにも最適な食品です。

 

 

ビタミン

チーズにはたんぱく貿やカルシウムのほかにも
ビタミンA、B1、B2、B12といったビタミン類も豊富に含まれています。

 

ビタミンAには、体に抵抗力をつけ、皮膚や粘膜を守ってくれる効果があり、
肉や魚など動物性の食品に含まれるレチノールと、にんじん、ほうれん草、
ピーマンなどの緑黄色野菜などに多く含まれるカロテンがあります。

 

また、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が牛肉や卵に次いで多く含まれているほか、
カルシウムと同様、日本人に不足しがちといわれるビタミンB2も豊富で、
体の細胞の再生を助けて健康な髪や肌を作ってくれます。
さらに、貧血を防いでくれるビタミンB12、エネルギーの代謝を促進するビタミンB6などが
含まれています。
このように、ビタミンの面でもほぼ完璧な栄養価をもったチーズですが、
ビタミンCだけは全く含まれていないので、チーズを食べるときは、
一緒にビタミンCを含む果物や野菜をとるとよいでしょう。

 

 

たんぱく質

人間の体を作るのに、欠かすことのできない栄養源のひとつのたんぱく質。
チーズに含まれる動物性たんぱく質は、
体が必要とする必須アミノ酸をご飯や麺、パン、大豆などの植物性たんぱく質よりも
豊富にバランスよく含まれています。

 

豊富な栄養素を効率的に消化、吸収してくれるので、
ヨーロッパでは「白い肉」と呼ばれているほど。
とくに、血液や筋肉、骨格など、体の基盤を作らなければいけない胎児や乳児、
歯や骨などを形成しなければいけない幼児、成長期の子供には
欠かせない栄養素です。

 

また、動物性たんぱく質には、脳内の降圧作用があり、
脳卒中の予防になるといわれていますので、お年寄りにも適しています。
チーズは、年齢を問わずおすすめできる食品といえるでしょう。

 

 

脂肪

たんぱく質と並んでチーズに多く含まれているのが脂肪分。
この脂肪分が、チーズの口当たりと味を大きく左右するといわれています。

 

カッテージチーズ以外のナチュラルチーズには、
100gに対して25〜30%(平均)の脂肪分が含まれていますので、
他の食品と比べても決して少なくはありません。
クリームチーズ100gに約33g、カマンベールには100gに約25g含まれています。

 

このようにチーズの脂肪分は少なくはありませんが、
成人(20歳代の女性)が一日に必要とする脂肪量は50gといわれているため、
上手に食べれば問題はないでしょう。

 

また、チーズの脂訪中に含まれているビタミンB2が、
脂肪をすぐエネルギーに変えるばかりか、
熟成中の酵素のはたらきによって脂肪を分解し、
ほかの動物性脂肪より消化されやすいです。

 

脂肪分は腹もちがよいため、一日に数切れのチーズをダイエット中の食事に取り入れると、
食事全体の量を抑えたり、カロりーの取りすぎを防ぐことができます。

 

チーズの脂肪分を「固形分中脂肪分」と表示ていますが、
これはチーズの水分を抜いた固形分(チーズになった状態)に対する脂肪分の割合です。
これを目安にして、自分にあった味(脂肪分が高ければ通常はマイルドで食べやい)と、
一日に食べる量を決めればよいわけです。

 

また、どうしても脂肪分が気になる人は、
赤ワインと一緒に食べればよいといわれています。
これは、赤ワインのポリフェノールが、
腸で脂肪分が吸収されるのを抑えてくれる働きがあるからです。

 

 

塩分

チーズを食べたときに、塩分が強いなと思った人も多いのでしょう。
ただ、食品成分表を見ると、ソフトタイプのクリームチーズで、
100g中に0.7g、水分量の少ないチーズで、100g中に3g程度しか含まれていません。
一番塩けの強いブルーチーズでさえ、100g中に約3.8g。

 

一般に、成人の一日に必要な塩分は、最低で3〜5g程度、
多くても10g以下と言われています。
これからもわかるように、食べすぎなければ
チーズの塩分を気にすることはないでしょう。

 

 

美容食品として

塩分が多そうに感じるブルーチーズですが、
チーズの中にバランスよく含まれたビタミンAやビタミンB群は、
はり、つやのある肌や髪を作って豊富に含まれているカルシウムは
骨を丈夫にするだけでなく、脳のはたらきやホルモンの分泌、
筋肉の収縮を助け、老化を防いで血液や皮膚を若々しく保ってくれます。

 

また、胃腸のはたらき活性化し、美容の大敵である便秘を解消する効果もあります。

 

私たちが摂取したたんぱく質はアミノ酸となって一度、体に吸収され、
再び体が必要とするたんぱく質に作り変えられます。
このときに必要とされる8種類の必須アミノ酸がありますが、
チーズにはこの必須アミノ酸がバランスよく豊富に含まれているため、
体の新陳代謝を促進してくれるのです。

 

 

ダイエットとして

栄養価が高いと分かっていても「チーズ=太る」というイメージをもつ人は多いでしょう。
しかし、チーズに含まれる脂肪は乳化状態(水と脂が均一に混ざり合った状態)であるため
消化されやすく、さらに、ナチュラルチーズに含まれる乳酸菌や酵素は
消化を助けてくれます。

 

また、ビタミンB2には脂肪を燃焼するはたらきがあるため、
過度の摂取をしなければ、チーズを食べて太るということはないでしょう。

 

ダイエットをしようとすると、カロリーだけを気にして無理な食事制限をし、
結局十分な栄養が得られずに、体重は減っても肌がボロボロになってしまったり、
体調をこわしてしまうという人がいます。
少量でも腹もちがよく、栄養分が豊富なチーズは、
ダイエットにも適していると言えるでしょう。

 

 

肝機能の促進

チーズの成分の約25%を占めるたんぱく質は、
発酵、熟成という製造工程の中でさまざまなアミノ酸に分解されていきます。
アミノ酸には肝機能を促進する効果があるため、
チーズは、飲酒による肝臓の障害や、肝臓疾患の治療に効果があるといわれています。

 

アルコールの分解は肝臓で行われますが、
チーズに含まれるアミノ酸のメチオニンやビタミンB群が肝臓のはたらきを
活性化させるため、代謝がよくなり肝臓障害を防ぎます。
乳酸菌や酵素の消化作用や、カルシウムの整腸作用もあるため、
お酒を飲んだ翌朝も体を快調にしてくれます。

 

お酒を飲む前にチーズを一切れ食べれば、
チーズの脂肪が胃の粘膜を保護してくれるので悪酔いしにくくなります。
ヨーロッパでワインやお酒のおつまみにチーズを食べるという習慣は、
健康的にも理にかなっています。

 

 

制ガン作用

チーズには肝臓を保護する作用や胃腸のはたらきを促進する作用だけでなく、
ガンを予防する作用もあるといわれています。
チーズに含まれるたんぱく質(ラクトフェリン)と体内に吸収された鉄分が血液中で結合し、
ガン細胞の増殖を抑えるリンパ球の一種であるナチュラル・キラー細胞を活性化するため、
ガン細胞の増殖を阻止してくれるといいます。

 

どんな健康な体にもガン細胞はあり、
ストレスや生活の不摂生などの原因によって常に増殖しているので、
日常的にガン細胞の増殖を予防しなければいけないといわれています。
普段の食事にバランスよくチーズを取り入れることで、健康な体を保ちましょう。